5.1-7 君の話をしてくれないか
■ ユールモア
アルフィノ : Noleが集めてくれた情報によると、チャイ・ヌズ殿は、この都市の状況と合わせて、周辺の集落のことも気にかけていたようだね。
アルフィノ : ならば、直接それらの集落に足を運んだ可能性もある。ここは再度、足を使って各集落で目撃情報を集めてみよう。
アルフィノ : カイ・シル、君は馴染みのあるゲートタウンを頼む。私は、知り合いの多いスティルタイドを当たってみよう。Noleは、「ライト村」を頼めるかい?
カイ・シル : わかりました。聞き込みを終えた後は、どこで落ち合いましょう?
アルフィノ : どこにも目撃情報がなければ、残るはコルシア島の北……昇降機をのぼった高地しかない。そちらでの捜索に移行できるよう、トップラングで集合といこう。
アルフィノ : もし、誰かがチャイ・ヌズ殿を発見できた場合も、彼を連れて、トップラングに。そこで、落ち着いてユールモアを離れた事情を聞くとしよう。
■ コルシア島>ライト村
▼ ライト村の住民と話す
ハステロット : ……たしかに、壮年のミステル族の紳士がきました。ライト村とユールモアとの関係性を気に病んでいたようで、村の連中に、いろいろと話を聞いていましたよ。
ハステロット : 「メオル」の配給や、「上」での豪奢な生活を求めて、この村からも多くの者が出ていったんです。
ハステロット : しかも、ドン・ヴァウスリーは恭順の意思が見られないと、
この村から、警備の兵を引き上げてしまった。
ハステロット : あの、はぐれ罪喰いによる襲撃以降……多くの村民は、ユールモアから受けた仕打ちを恨んでいます。
ハステロット : 村を訪れた紳士にも、そう伝えました。ヴァウスリーが去ったとはいえ、それでユールモアが変わるのか、しばらくは様子を見たい、と……。
ハステロット : ほかの村民からも、似たようなことを聞かされたらしく、憔悴した様子で、村を出ていきましたよ。
カイ・シル : ゲートタウンにも、チャイ・ヌズさんは姿を現していました。 みんな、あんなにオドオドした自由市民は初めてだって、 よく覚えていたので、間違いないです
▼ トップラングのアルフィノと話す
アルフィノ : ふむ、本人を連れていないということは、ライト村にも、チャイ・ヌズ殿はいなかったのだな……。何か情報を得ることはできたかい?
アルフィノ : そうか、彼がそんなことを……。私たちの行った集落でも、本人と会えはしなかったが、同じようにユールモアとの関係を聞きまわっていたようなんだ。
アルフィノ : 各集落との関係修復の糸口はないか、探っていたようだね。となれば、ユールモアと関係の深い集落で残るのは、アミティーくらいのもの……。
アルフィノ : チャイ・ヌズ殿が、あの村に向かった可能性は高い。みなで「アミティー」に向かい、彼を探してみよう。
▼ アミティーでチャイ・ヌズを探す
チャイ・ヌズ : むっ、お前たちは……!
カイ・シル : チャイ・ヌズさん……!ようやく、見つけましたよ!
チャイ・ヌズ : 私を探していただと?いったい、なぜ……?
アルフィノ : ドゥリア夫人から、旦那様が失踪したと相談されたのです。あなたが姿を消したことで、とても心配していましたよ。
チャイ・ヌズ : なに?だが、あいつに宛てて置き手紙を残したはずだぞ?部屋の文机の上に……。
チャイ・ヌズ : ……さては、起き抜けに私の姿が見えなかったことで動転し、部屋の中をろくに見もせずに飛び出したな?あれの性格を考慮しなかった、私の失態か……。
アルフィノ : ……チャイ・ヌズ殿、よければ、何を求めてユールモアを離れたのか、お聞かせいただけませんか?
アルフィノ : あなたが次期元首に推挙されたことは、聞いております。そして、ユールモアや周辺集落が抱える問題について、調査なされていたことも、足取りを追う中で知りました。
アルフィノ : つまりは……元首の座に就くにあたっての、事前調査ということですか?
チャイ・ヌズ : お、おい、結論を急がないでくれ……!
チャイ・ヌズ : 私が事前調査をしていたのは、そのとおりだ。だが、私は「やれる」という確証を得られないのなら、何事も「やる」とは言えない性分なのだ。
チャイ・ヌズ : 条件が整わないのであれば、元首への推挙を受けるつもりにはなれない。
アルフィノ : 条件、ですか……?アミティーまで足を運んだのも、そのためである、と?
チャイ・ヌズ : ああ……さまざまな立場の者に声をかけ、情報は集まった。ユールモアを立て直すために、手を貸してもいいという者も、数名だが、名乗り出てくれている。
チャイ・ヌズ : あと、もうひとり……私が求める能力を持った者が協力を約束してくれれば、こんな私でも、元首らしいことができるかもしれないのだ……!
アルフィノ : なるほど……。決断まで熟考を重ねる「慎重派」のあなただからこそ、その言葉を、心から信じることができます。
アルフィノ : 今のユールモアには、自分で立ち上がる決断をした、あなたのような元首が必要です……。「もうひとり」の協力を取り付ける件、私にも手伝わせてください。
チャイ・ヌズ : お前たち……。
カイ・シル : あの……何もできないかもしれないけど……俺も、どうかこのまま同行させてもらえませんか?
カイ・シル : Noleさんとアルフィノさんのおかげで、チャイ・ヌズさんを見つけ出すことは叶いました。でも、このまま街に戻っても、俺……。
カイ・シル : かつてのユールモアに持っていた「憧れ」は、ヴァウスリーの真実が明るみになることで消え失せました。なのに俺は……その次の、新しい目的を何も見つけられていない。
カイ・シル : 俺がひとり、目的を失って空っぽのままでいる間にも……チャイ・ヌズさんは、ユールモアの未来を真剣に考え、厳しい意見にも耳をふさがず、前へ進もうとしています。
カイ・シル : そして、その目的に間髪入れず「協力したい」と申し出た、アルフィノさんと、Noleさん……。
カイ・シル : そんなふうに、俺も自分のやりたいことを見つけて、強く宣言できるようになりたい……。だから、皆さんが新たな挑戦をしている姿を見ていたいんです。
チャイ・ヌズ : 未知なる挑戦にともなう恐怖は、今も私を取り巻いている。そこまで言ってもらえるほど立派な心づもりでもないが……いずれにせよ、私に反対する理由はない。
カイ・シル : チャイ・ヌズさん……おふたりも……。ありがとうございます……!
チャイ・ヌズ : とはいえ、その挑戦も、実は頓挫の危機にあるのだがな……。肝心の「もうひとり」の協力を取り付けるのが、かなり難しそうなのだよ。
アルフィノ : というと……?まさか、求めていた協力者が、すでにアミティーを離れていたとでも?
チャイ・ヌズ : いや、集落にはいたのだが……先ほど声をかけたところ、ろくに話も聞いてもらえず、立ち去られてしまったのだ。
チャイ・ヌズ : その者の名は「レンデン」。ヴァウスリーの父が元首を務めていた頃、
ユールモアで補佐官を務めていたという人物でな。
チャイ・ヌズ : 当時、政務を司っていた彼は、軍事を司るランジート将軍と共に、ユールモアの両腕と呼ばれるほど、活躍していたらしい。
チャイ・ヌズ : 企業経営やタロースの製造ならともかく、あいにく私は、政治については門外漢もいいところだ。レンデン殿を味方につけるのは、もはや必須条件と言っていい。
アルフィノ : なるほど……一度、立ち去られてしまったのなら、このまま後を追いかけても、結果は変わらないでしょう。
アルフィノ : まずは、同じアミティーに住む者に、レンデン氏の人となりを聞いて、策を練るのはいかがです?
チャイ・ヌズ : そうだな……!アミティーならば、私たちと面識がある「トリストル」がいる。話を聞いてみるか。
チャイ・ヌズ : トリストルに甘える資格などない私だが、ほかに頼れる相手も……いや、後ろ向きな発言はやめよう。未来へと進むため、誠心誠意、頼むだけだ。
アルフィノ : チャイ・ヌズ殿が、それほどまでに協力を乞う相手となれば、レンデン氏は、かなり優秀な人物なのだろうね。
カイ・シル : この村の人たちは、己の足で立ち生きていくことを、自ら選んだんですよね……。
▼ トリストルと話す
トリストル : ご無沙汰しております、皆さん。用件はわかっています……先ほど、チャイ・ヌズ様が、レンデンさんに冷たくあしらわれているのを見ていましたから。
チャイ・ヌズ : ああ……そこで、こんなことを頼める立場じゃないんだが、レンデン殿のことを教えてくれないか……?ユールモアを立て直すために、彼の力が必要なんだ。
トリストル : ……よろしいでしょう。ユールモアに、より善くあってもらいたいという想いは、私とて同じですから。
トリストル : レンデンさんは、とても厳格な方……。毅然とした態度を好み、意志の弱さを嫌うようです。
トリストル : あなたが、ユールモアを離れた者に対して、負い目を感じていることは承知しています。過去を悔いることができるのは、素晴らしいことでしょう。
トリストル : ですが、控えめすぎる態度が、レンデンさんには、弱腰に見えたのかもしれません。彼の協力を得たいなら、己の主張を強く行う必要があるかと。
チャイ・ヌズ : 強い主張、か……。人を導こうというのなら、間違いなく必要なことだ。
トリストル : レンデンさんは、北の八号坑口の方へ行かれたようです。あとは……率直な想いを、ぶつけるだけだと思いますよ。
チャイ・ヌズ : ……よ、よし!「八号坑口」に向かい、レンデン殿に再度想いを訴えよう。毅然と、己の意思を強く示して、な……!
トリストル : レンデンさんは、「八号坑口」に……。 ひとりで、自分の足で、この村を訪れたチャイ・ヌズ様なら、 きっと大丈夫ですとも……。
▼ 八号抗口でレンデンと話す
レンデン : 誰かと思えば……また、お前か……。
レンデン : しかも、ゾロゾロと連れ立って……ひとりで説得できぬと見て、助っ人でも呼んできたか?
チャイ・ヌズ : 呼んだわけではないが……確かに彼らは助っ人だ。いや、正確には、手助けをしてくれた恩人だ。
チャイ・ヌズ : 彼らは、ドン・ヴァウスリーの下で惰眠を貪ってきた私たちを、目覚めさせてくれた「闇の戦士」たちなのだ。
レンデン : ほう……「闇の戦士」とな……。
チャイ・ヌズ : だがしかし、いつまでも恩人の優しさに甘え、助力を受け続けるわけにはいかん。
チャイ・ヌズ : それでは、ヴァウスリーの力に頼り、すべてを任せきりにしていた頃と大差がない……。彼らは助っ人ではなく「立会人」と考えていただきたい。
アルフィノ : チャイ・ヌズ殿……。
レンデン : ふん、殊勝な心がけだが……さてな。
レンデン : 私は、己を「官僚」であると規定してきた。民のため、国のため、政を司る者に対して助言を行い、その方針を最善の方法で実現すべく、働いてきた自負がある。
レンデン : だが、それは理想を共有できればこそ……。民が、国が、指導者が……理想とする「楽園」とやらに、共感できなくなったがゆえに、私はユールモアから去ったのだ。
レンデン : チャイ・ヌズとか言ったか……。ヴァウスリーの下で奔放な生活を送ってきた貴様が、いかなる国を築かんとするというのだ?
チャイ・ヌズ : そ、その問いに一言を以て応じるほどの答えを、私は……私は、まだ見いだせてはいない。
チャイ・ヌズ : だが……!
チャイ・ヌズ : 私はいかなる国を築くのかを、市民が語れる国を作りたい!
チャイ・ヌズ : 罪喰いの脅威に怯えて暮らす世界で、私を含め、多くの者が、身の安全と食料を求めて、ユールモアに集ってきた。
チャイ・ヌズ : 一芸を持ち、身の振り方を決められる労役市民はともかく、街の周辺に住まう者たちは、食料の配給を断たれ、今日明日を生き延びることに必死だ。
チャイ・ヌズ : 自由市民に至っては、もっと酷い。未だ酒や快楽に溺れ、現実から目を背け続ける者も少なくない。
チャイ・ヌズ : 今のままでは、早々に富を食いつぶす者も現れるだろう。私が元首となれば、その権限を以て、かつて、国に差し出された財産の再分配を行うつもりだ。
チャイ・ヌズ : 貧者であれ富者であれ、このような状態では国の未来など語れようものか……!
チャイ・ヌズ : 食料の早急な確保、周辺集落との関係改善、崩壊した産業の再建に、他地域との連携強化……。課題は、まさに山積みだ。
チャイ・ヌズ : 私は、政治家でも国王でもない。ダイダロス社の跡取り……企業家だ……!
チャイ・ヌズ : そんな私にできることは、問題を分析し、改善案を企画し、
収益を上げて部下を食わせること……。
チャイ・ヌズ : レンデン殿……ユールモアの民が、国の理想を思い描き、政に手を挙げられるようになるまで……どうか力を貸していただきたい!
レンデン : いかなる国を築くのかを、民が語れる国か……
レンデン : 悪くない方針だ。
レンデン : チャイ・ヌズよ……。お前がいっときとはいえ国政を担うに相応しい器か、
試させてもらうとしよう。
チャイ・ヌズ : な、なにをすればいい……!?
レンデン : 今、ユールモアが抱える問題のひとつを解決してもらう。そうでなければ、改革など夢のまた夢、誰もお前についてはこないだろうからな……。
レンデン : 主義主張だけ立派でも、行動が伴わなければ意味がない。さて、彼はどうかな……。
カイ・シル : いかなる国を築くのか、市民が語れる国……。俺も、自分の望む生き方を見つけられたら、そんな国で暮らしてみたいです。
アルフィノ : たしかに、理想と理屈だけでは人は束ねられない。私は、それを嫌というほど、学んだ経験があるからこそ……レンデン氏の言葉に重みを感じるんだ。
▼ チャイ・ヌズと話す
チャイ・ヌズ : ……よし、聞かせてくれ。解決すべき問題とは、何なのだ?
レンデン : ユールモアに関する、先ほどのお前の見立ては正しい。そして、その中でも急務なのが「食料不足」の解消だ。
アルフィノ : ふむ……市民か否かを問わず、ユールモアでは、ヴァウスリーによって供給されるメオルに依存してきた。ほかの食材は、備蓄を切り崩すにしても早々に限界がくる……。
レンデン : 飢えは、容易に人を獣へと追い落とす……。このままでは、遅かれ早かれ内乱が起こるだろう。
レンデン : この問題に、どのような対策を講じればよいか示してみろ。もちろん、助言はなしでな……。
チャイ・ヌズ : …………短期と長期、ふたつの対策が必要だろう。
レンデン : ほう、具体的には……?
チャイ・ヌズ : 短期的には、溜め込んだ富を元手に交易を行い、当座の食料を外部より仕入れる。ただし、これは長期的な対策のための時間稼ぎ……。
チャイ・ヌズ : 解決策の本命となるのは、廃村や人口減少が著しいライト村などへの移住を支援し、食料生産を試みてもらうことだ。
チャイ・ヌズ : むろん、そのためには周辺の集落との関係改善や、地域の治安向上、移住希望者の募集など前提も多いが……。
レンデン : …………なるほどな。その案は、自分で考えたのか?
チャイ・ヌズ : 机上の空論ではあるがな。多くの人々から意見を聞いた結果、考えついた答えだ……。
レンデン : …………おおむね、賛成だ。
チャイ・ヌズ : そ、そうか! それは、よかった!私の考えは、そう的外れでもなかったようだな。
レンデン : しかし、移住者の募集ひとつとっても、お前の弁舌だけで、人を動かせるとは限らない。彼らに、どうやって移住後の未来を信じさせるつもりだ?
チャイ・ヌズ : そちらについては、考えがある……!移住希望者には、労働タロースを貸し出すのだ。タロースがあれば、農業や漁業に関わる労働も劇的に楽になる!
レンデン : なに……?だが、ダイダロス社はもはや生産設備を失っているはず。今から設備を整えていては、到底間に合うはずが……。
チャイ・ヌズ : そのとおり……。だが、タロースに関しては私の専門分野だ。
チャイ・ヌズ : 私の知識と記憶、そしてほんのひとさじ、「立会人」に手を貸してもらえれば、その不可能も可能にできるはずだ!
レンデン : タロースか……そういえば、ヴァウスリーを追うために、ユールモアの民も含め、様々な地域の者たちで、巨大タロースをこさえたそうだな。
レンデン : ユールモアの連中の顔など見たくなかったのでな。下から人が現れたと聞いて、ここの小屋に潜んでいたのだが……さては、そこで「闇の戦士」に協力したのも、チャイ・ヌズだな?
カイ・シル : 己の目的に対して、何をすればいいのか……。チャイ・ヌズさんは、入念な聞き込みと過去の経験から、あの答えを導き出したんですね!
アルフィノ : 初めてユールモアで会ったときから比べると、チャイ・ヌズ殿の眼の輝きが違う……。そう思わないかい?