5.1-4 大切なもの
■ アム・アレーン>旅立ちの宿
ベーク=ラグ : 少し、昔話をしよう……。かつてフッブート王国に仕えていたワシは、
強化魔法の一種として、体内エーテルの活性化を研究しておった。
ベーク=ラグ : 先ほどの「生命力を活性化」する秘薬も、その産物よ。まぁ、これを悪辣なる宮廷魔道士に悪用されたというのは、先ほど話したとおり……。
ベーク=ラグ : ……いかん。何度も当時のことを思い出していたら、胸がズキズキしてきた。王国に起きた未曾有の悲劇、その光景までが鮮明に……。
ベーク=ラグ : あああ……騙された怒り、気づけなかった後悔……。ううむ、急激に気分が落ち込んできたぞ……。
ベーク=ラグ : おお、すまん、おぬしの言うとおりだ。どうしても自分の研究内容を人に伝えようとすると、つらい記憶が蘇り、動悸が止まらなくなってな……。
ベーク=ラグ : ともかく、ワシが言いたいのは、体内エーテルの活性化に関する研究成果の中には、「魂を活性化」する術も、含まれていたということだ。
アルフィノ : では、その術なら、ハルリクたちも回復できると?
ベーク=ラグ : 世界が「光」に覆われていた頃なら、焼け石に水で、罪喰い化を止めることはできなんだろう。だが、今ならば、回復の可能性は大いにある。
ベーク=ラグ : とはいえ、少々特殊な魔法なのでな。仲介役を用意し、そこに魔力を注ぎ込んで活性化魔法へと変換、効力増強をする必要がある……。
アリゼー : 具体的に何をすればいいか教えてちょうだい。今は小難しい理論を聞くより、はやく実践をしたいの……!
アリゼー : 魔具や触媒が必要なら、何でも取ってくる。特殊な作法があるなら、何でもやってみせるわ。それで、彼らを救えるのなら……!
ベーク=ラグ : ふむ、それは頼もしい……。
ベーク=ラグ : ン・モゥの魔法の仲介役には、我々が丹精込めて創りあげる魔法生物……
すなわち「ポークシー」が一番の適任である。
ベーク=ラグ : これを創るには、良質な「水」と「粘土」。それと、ピクシーの魔力が込められた火種、通称「妖精のランプ」が必要だ……。
アリゼー : それらの材料が集まれば、「魂の活性化」ができるのね?
アリゼー : なら……アルフィノ!今の材料の中に、私とあなた……私たちふたりが揃うことで入手できそうなものがあるわ。
アルフィノ : そ、それは、まさか「妖精のランプ」のことかい……?アリゼー : ええ、ピクシーは私たち双子をとても気に入っていたわ。いっとき、彼らの「おもちゃ」になることを了承すれば、大抵の物は譲ってくれるはず……!
アルフィノ : …………。
アルフィノ : わかった、ふたりでイル・メグに向かおう。妖精たちの相手を、あれほど嫌がっていた君が、そこまでの覚悟を示したのであれば、断る理由はないよ。
ベーク=ラグ : ふむ、よくわからぬが、ピクシーたちと面識があるとは心強い。
ベーク=ラグ : イル・メグに向かうのであれば、粘土に混ぜ込む水となる「甘き霊水」の調達も頼めるかね。プラ・エンニ茸窟のン・モゥと取引すれば、仕入れられるだろう。
アリゼー : わかったわ。「妖精のランプ」と「甘き霊水」……どんな目に遭おうとも、必ず、調達してきてみせるわ!
ベーク=ラグ : 残る材料はひとつ、良質な「粘土」だ。この場に残る、おぬしに調達を頼めるかね?
▼ ベーク=ラグと話す
ベーク=ラグ : さて、肝心の粘土を採る場所についてだが……おぬしには、アム・アレーン一帯の地質に詳しい、地元民の知り合いなど、おらんか?
ベーク=ラグ : ふむ、それは好都合だ!その者たちに粘土層がある場所を尋ね、「良質の粘土」を調達してきてくれたまえ。
ベーク=ラグ : その間、ワシは患者たちの診察をしておこう。「魂の不活性化」に繋がる情報を、少しでも得ておきたいでな。それでは、よろしく頼むぞ。
ベーク=ラグ : トゥワインなる集落の鉱山労働者を頼りに、「良質の粘土」を採ってきてくれ。その間、ワシは患者たちの診察をしておこう。
■ アム・アレーン>トゥワイン
▼ トゥワインのマグヌスと話す
マグヌス : おお、Noleじゃねえか!こいつは、嬉しい来客だな!
サーフ : 元気そうでよかったよ。俺たちの方も、ユールモア軍に壊された、
トロッコとタロースの修復が、ようやく終わったところさ。
マグヌス : トロッコの方は、技師たちで修復の目処もたてられたんだが、タロースの修復まで、こんなに早く行えたのは、協力者が名乗り出てくれたおかげなんだ。
マグヌス : 巨大タロース建造のときに、話を聞いたチャイ・ヌズ殿が、残っていたダイダロス社の資材を分けてくれたんだ。修復に役立つアドバイスも一緒にな。
ジェリック : チャイ・ヌズさん、いい人だよねー!俺、あの巨大タロースを有効活用する計画があるんだけど、その話も、最後まで聞いてくれてさ!
ジェリック : そうだ、Noleも聞いてよ!グルグ火山の巨大タロースで超巨大トロッコを牽引できたら、きっと役立つと思うんだけど、親方が反対してて……。
サーフ : ジェリック、いつ実現するかもわからない話に、Noleまで、巻き込むものじゃないぜ。チャイ・ヌズさんも、お前の勢いに押されてただけだからな……?
マグヌス : サーフの言うとおりだな。近況報告も、ここらへんにしておこう。ここを訪ねてくれたのも、きっと何か用事があるんだろう?
マグヌス : なるほど、良質な粘土が採れる場所か……。ジェリック : そういうことなら、サーフが詳しいよ!今でも、小銭稼ぎに採掘に行ってるわけだしね!
サーフ : そうだな……需要がないもんで俺たちは掘らないが、この辺りでは、確かに粘土が採れるはずだ。
マグヌス : ナバスアレンが栄えていた当時は、北のビラン大鉱山の周辺で採取した粘土で、アドベレンガっていう建材を作っていたと聞いたことがある。
マグヌス : 「良質の粘土」を求めているなら、その辺りの地面を、掘り返してみることだな……。ただし、魔物も多いから、気を抜くんじゃねえぞ?
マグヌス : 用事なんざ、あろうがなかろうが関係ない。お前が来たら、俺たちはいつでも歓迎する。だから、暇なときにでも、また寄ってくれ。
サーフ : ビラン大鉱山の辺りなら「良質の粘土」が採れるはずだ。あんたなら大丈夫だろうが、粘土探しをするなら、背後に迫る魔物に気をつけろよ!
ジェリック : 超巨大トロッコの件、時間があるときに詳しく話をさせてね!絶対、楽しいと思うんだー!
▼ ビラン大鉱山の指定地点を調べて、良質の粘土を入手
アリゼー : ピクシーの悪戯なんて……耐えて耐えて、全部忘れればいいのよ!……ともかく、必要な素材は手に入れてきたわ!
アルフィノ : 私たちが、どこまでソックリなのか、耳や指、ついには歯並びまで確かめようと手を入れてきて……。ああ、これ以上は思い出したくもないよ…
▼ ベーグ=ラグに良質の粘土を渡す
ベーク=ラグ : この双子……。ピクシーたちを相手取って、こうも順調に戻ってくるとはな。さすが、世界に闇夜を取り戻した「闇の戦士」の一味よ。
ベーク=ラグ : さて、おぬしも「良質の粘土」は入手できたかね?
ベーク=ラグ : 見事、見事!さて、あとはこの「良質の粘土」を「甘き霊水」で練って、「妖精のランプ」から火種を移せば……フフフ……。
アリゼー : ……ねえ、ベーク=ラグ。その活性化魔法って、行うのは誰でもいいの?
ベーク=ラグ : それなりの魔力が必要だが、ワシである必要もない。……術者に、立候補したいのか?
アリゼー : 私は、ハルリクやみんなを罪喰い化の苦しみから解き放つと、そう心に誓って、この世界で冒険をしてきたわ。この手で、彼らを救えるのなら……。
ベーク=ラグ : ……活性化魔法は、術者の対象への理解が肝心だ。対象の症状・状態をよく観察し、細かな変化にも気づけるほど、相手をよく知っていれば、それだけ成功率も上がる。
ベーク=ラグ : なれば……彼らを救いたいと強く願い、己が時間の多くを、彼らのために割いてきた、おぬしこそ、適任と言えるかもしれんな。
アルフィノ : 私も同意するよ。Nole、君はどうだい?
アリゼー : あら、発破をかけようっていうの?……大丈夫、あなたの手を煩わせる前に、
私が、きっと成功させてみせるわ……!
ベーク=ラグ : 決まったようだな。それではアリゼーよ、手順と術式を授けよう……。
ベーク=ラグ : それでは始めるぞ。
ベーク=ラグ : これまで集めてきた素材を、すべて砕いて混ぜ込んだ粘土は用意できておるな?
ベーク=ラグ : ふむ、よかろう。では、それを豚の形にコネてみせよ。
ベーク=ラグ : とびきり、かわいく……な。
アリゼー : わかったわ……。
アリゼー : で、できたわよ……!
アルフィノ : アリゼー、君の作品は……昔から、独創的……フフ……。
アリゼー : ちょっとそこ、笑うんじゃないわよッ!
ベーク=ラグ : よいよい、デキの良し悪しは関係ない。この潰れたプリンのようなシロモノを術者であるおぬしが、「とびきりかわいい豚」であると認識できておればいいのだ。
アリゼー : まったくフォローになってないんだけど……。
ベーク=ラグ : よいかね……。魔法とは、空想を現実へと変換する術のことだ。
ベーク=ラグ : それゆえ、術者の認識が重要となる。イメージさえ強固であれば、見た目に惑わされる必要はない。よくよく覚えておくのだぞ?
ベーク=ラグ : さあ、教えたとおりの術式で、粘土の豚に魔力を注ぐのだ。
アリゼー : 豚は飛ばず、土は起きず、命分かたれぬのが理なれど、我が生命の力よ、今ひととき理より離れ、空飛ぶ豚とならん……。
ベーク=ラグ : ふむ、なかなかのデキではないか。
ベーク=ラグ : では、この使い魔を用いて、ハルリクとやらの「魂の活性化」を執り行うぞ。さあ、患者をここへ……。
ベーク=ラグ : さて、アリゼーよ。おぬしが創った使い魔には、すでに魂を活性化させる、一種の強化魔法が備わっている。
ベーク=ラグ : あとは、自身の魔力を注ぎ込みながら、心に決めた使い魔の名を呼んでやるだけだ。
アリゼー : この子の名前…………。
アリゼー : うん、決めたわ……やってみる!
アリゼー : いきなさい、アンジェロ!
ハルリク : オ母サン……ボク、ハ…………
ベーク=ラグ : 空想を現実に変える。 その強き想いは、彼女だけのものではあるまい。 ここにはおらぬ誰かから、アリゼーが継いだものに違いない。
ハルリク : …………オ母ァ……アリ、ア…………。
アルフィノ : い、今……ハルリクが言葉を…… 君も聞いただろう……?
▼ アリゼーと話す
アリゼー : ねえ、ベーク=ラグ、どう……!?活性化魔法は、成功したのよね?
ベーク=ラグ : うむ、おぬしとアンジェロは、見事にやってのけた……。かすかではあるが、ハルリクの魂から温かな力を感じるぞ。
ベーク=ラグ : ……成功と言ってよかろう。よくやった、アリゼーよ。
アリゼー : ……よかった。ありったけの魔力を振り絞ったから、もうフラフラよ。でも…………
アリゼー : ハルリク、あなたの声……その想い……たしかに聞こえたわ。
ベーク=ラグ : 患者に負担がかからぬよう、慎重に治療を進める必要はあるが、このまま、活性化魔法を行いつづければ、いずれ、完全に快復しよう。
ベーク=ラグ : そして、停滞した魂が活性化する過程を確認したことで、真逆の現象についても、見えてきたことがある。「魂の不活性化」の理論構築に繋げることができそうだ。
アルフィノ : 白聖石による原初世界への帰還にも、希望が見えてきたということですね……!
アリゼー : ……ねえ、ちょっと思いついたことがあるんだけど。
アリゼー : 魂が、不活性な状態となることで、体が意のままに動かなくなったり、心身から活力がなくなる。これが罪喰い化に似ているという着想から、私たちはここにきた。
アリゼー : でも、そうした魂が不活性な状態って……蛮神のテンパード化とも似ていると思わない?
アルフィノ : アリゼー、君はテンパード化が、魂を強制的に不活性にして心を封じ込めるような技だと、そう推察したというのかい……?
アリゼー : それでね……もし、この考えが正しければ、今の活性化魔法を用いて、テンパード化を解けるかもしれない。そう、あの子を……救えるかもしれないと思うの……!
アリゼー : あなたも、そう思う!?テンパード化という現象が、莫大なエーテル放射を浴びて、魂が不活性化することだとしたら、可能性はあるわよね!
ベーク=ラグ : はてさて……いったい、何の話をしておるのだ?
ベーク=ラグ : ……ふむ、可能性がないではないな。とはいえ、魂とは繊細で未知の部分も大きい。安全性を確認しながら、慎重に研究を進める必要があろう。
アリゼー : もちろんよ……!今は、可能性が芽生えたってだけでも十分だわ。
アリゼー : そうと決まれば、行動あるのみよ。悪いけど、私はアンジェロと一緒にここに残って、できるかぎり患者たちの治療を続けさせてもらいたいの。
アリゼー : あなたたちは、クリスタリウムに戻って、白聖石の方を手伝ってもらえるかしら。出番になったら、ちゃんとすぐに駆け付けるから……!
ベーク=ラグ : やれやれ、あれだけ魔力を使っておきながら、元気な娘だ。これが若さというものかの……。
アルフィノ : それでは、アリゼー以外はクリスタリウムへ……
???? : アルフィノさん、Noleさん!よかった、ここまで探しに来た甲斐があった……!
アルフィノ : カイ・シルじゃないか!どうして君がこの場所に……?まさか、ユールモアで緊急事態でも!?
カイ・シル : あっ、いえ、街に何かが起きたわけじゃ……ただ、ちょっとやっかいな問題が起きているんです。それでドゥリア夫人に頼まれて、ふたりを探していたんですよ。
アルフィノ : ドゥリア夫人が……?……どうやら急ぎの案件のようだね。
ベーク=ラグ : ……クリスタリウムなら、ワシひとりで戻れる。どうせ研究の間、おぬしたちに頼むことなど大してないのだ。ならば、そちらの案件とやらを片付けてやるがいい。
アルフィノ : ベーク=ラグ殿……ありがとうございます。
カイ・シル : 付き合わせて、すみません。でも、俺もおふたりが来てくれると助かります……。ひょっとすると、ユールモアの未来に関わるかもしれないので。
アリゼー : ユールモアの未来に関わる用件、ね……。アルフィノにとってみれば、他人事じゃないはずよ。入れ込みすぎないよう、見ていてあげて。
アルフィノ : ドゥリア夫人が、私たちを呼ぶ理由……いったい何が起きているんだ