5.3-3 消えゆく鼓動 / Fraying Threads
リーン:「 すみません……ちゃんと順番にお話ししますね。私とアリゼーさんは、子どもたちを連れて、アルフィノさんたちの待つ医療館に戻りました。ちょうどそこに、サンクレッドが帰ってきたんです。エリディブスを追って各地をまわっていたけど、この街の近くで、ふらっと行方をくらましたのだとか……。」
リーン:「 そんな報告の最中でした。サンクレッドが、急に意識を失って倒れたのは……。 ひとまず医療館のベッドに寝かせて、子どもたちを帰しました。今は、治癒魔法の得意なアルフィノさんたちが付き添いを。私は、とにかくみなさんに連絡しなきゃと思って……大広場にいた衛兵さんから、水晶公が街の入口の方へ向かったと聞いたので、ここに……!」
水晶公:「状況はわかった。サンクレッドのことが心配だろうに……よくがんばってくれたな、リーン。ともかく、急ぎ医療館に向かうとしよう。」
シェッサミール:「ベッドは好きに使ってくれて構わないわ。手伝えることがあったら、言ってねぇ……。」
アルフィノ:「……サンクレッドの症状について、気になる点があるんだ。君も、彼の様子を見てみてくれないかい?」
リーン:「サンクレッド……!もう起き上がって平気なんですか!?」
アリゼー:「無事にリーンと会えたみたいで、よかったわ。子どもたちなら、聞き分けて帰ったわよ。……いい子たちね。」
水晶公:「よかった、目覚めてはいるようだな……。」
■ サンクレッドと話す
サンクレッド:「ああ、お前まで来てくれたのか。心配かけて、すまなかったな……。」
水晶公:「ひとまず意識が戻って何よりだ。今の調子は……?」
サンクレッド:「少しばかり、身体が重い……が、療養が必要なほどじゃないさ。」
アルフィノ:「実際、倒れた要因となりそうな傷病は見つからなかったんだ。念のために治癒魔法をかけはしたが、浄化というより、エーテルを補ったにすぎないよ。」
水晶公:「ふむ……となると、考えられるのは……。」
サンクレッド:「……事ここに至っては、白状しておいた方がよさそうだ。 アニドラスに行く前……溺れかけたウリエンジェを助けたときに、俺がフラついてたことを覚えてるか?」
リーン:「はい……。あのときは、ウリエンジェもなんだか不調で……それで、水上歩行術が失敗しちゃったんですよね。」
サンクレッド:「ああ、まさにそのときだ。おかげで、ふたりしてお前に「休め」と言われたんだったな。……実は、あれ以来、身体の不調が頻発してるんだ。今回のように意識を失ってパッタリなんてことはなかったが、眩暈程度なら、しょっちゅうでな。」
サンクレッド:「原因が、傷病でも老け込んだわけでもないとすれば、一番あり得そうなのは……。」
水晶公:「肉体と魂の結びつきが、いよいよ薄れてきている……か。窮地だな……。 だが、ここまできて、手遅れになどさせるものか。今度こそ、ソウル・サイフォンを完成させてみせよう。」
水晶公:「それにあたって……Lusie。すまないのだが、原初世界に戻って、皆の肉体の状況を確認してきてもらえないだろうか? 魂と記憶を帰還させるにあたって、あちら側に懸念がないか、クルルたちに聞いておいてほしいのだ。」
サンクレッド:「その間、俺たちでエリディブスの対応にあたっておこう。……実は、奴を追跡する中で、気になる情報を掴んだんだ。奴が訪れた場所のいくつかで、同時期に、「黒い衣の不審者」が目撃されている。」
サンクレッド:「それと前後して、ちょっとした事件や、凶暴化した獣による集落の襲撃が起こっていてな……。正体不明の不審者が犯人なのではと、皆、不安がっていた。」
アルフィノ:「まるで、アルバートに扮したエリディブスの話を……新たな英雄の必要性を、裏付けるかのような状況だ。となると、その「黒い衣の不審者」は、彼に協力するアシエンという可能性もあるんじゃないかい?」
サンクレッド:「ああ、俺もそう考えている。……が、確かめるには、もっと手広く調査が必要だ。そこでお前たちの手を借りたい。」
アリゼー:「やっと出番ね。動くに動けない状況が続いてて、モヤモヤしてたのよ。」
水晶公:「そういうことなら、ウリエンジェにもそちらに合流してもらおう。 ソウル・サイフォンの製作においては、すでに彼から十分な意見をもらっている。あとは私が結果を出すだけだ。」
サンクレッド:「了解だ、頼りにしてるぞ……水晶公。そうと決まれば、さっそくウリエンジェを呼びに……」
アリゼー:「それは私とアルフィノで行ってくるから、サンクレッドは、出発まで休んでて。リーンに心配かけた自覚があるならね!」
アルフィノ:「Lusie、確たる情報を掴んだら、共有しに戻ってくるよ。君も……あちらの私たちを、どうか頼む。」
サンクレッド:「休みが取れるのは結構だが、こうも立て続けに若い連中から言われると……堪えるな。」
リーン:「サンクレッドや、みなさんのこと……こんなときだけでも、私が絶対護ります。そちらもどうか、お気をつけて!」
■ 石の家のタタルと話す
タタル:「Lusieさん!?ちょうどいいところに……いえ、ダメなところに……でもやっぱりよかったのかも……あううう……!実は、眠っているみなさんの体調が、ここのところ急に悪くなってきたのでっす……。
タタル:「今も、クルルさんが、そちらの「未明の間」にこもって、つきっきりで処置をしてらっしゃいまっす。無暗に不安を煽りたくないから、この件はあまり……Lusieさんにもまだ連絡しないでと、言われているのでっすが……。」
タタル:「ハッ……!こ、こちらのことばかり申し訳ないでっす。何かご用でっしたか……? なるほど、みなさんの帰還にあたり、懸念がないかの確認でっすか……。 そういうことでっしたら、やっぱり、クルルさんと直接話していただくべきでっすよね……。わかりまっした……!このタタルの一存で、Lusieさんを、「未明の間」にご案内するでっす。
タタル:「中では、みなさんが……みなさんの身体が眠ってまっすので、心の準備を整えてから、そちらの扉の先に進んでほしいでっす。」
タタル:「未明の間」は、そこの扉の先でっす。私もご一緒いたしまっす……!」
■ 未明の間へ向かう
タタル:「失礼しまっす……。 あちらへ……。」
クルル:「 ……来てしまったのね。できるだけ、あなたには見せたくなかったのだけれど。」
タタル:「申し訳ないでっす……。でも、緊急でお伝えしたいことが……。」
クルル:「責めてるわけじゃないわ。ただ、お世辞にもいい光景じゃないから……。 みんながすでに全力で帰還方法を模索している以上、余計な重圧は、かけるべきではないと思っていたの。」
クルル:「もっとも……この容体を思うと、今見に来てもらって、正解だったかもしれないわね。」
クルル:「……冷たくて、固い。まるで剥製か人形のようでしょう。かろうじて生きてはいるのよ。でも……本当にかろうじて。つい最近までは、もっと良かったの。エーテルに揺らぎが起こることはあったけれど、ただ眠っているかのような健やかさだったわ……。」
クルル:「だけど、ここに来て急変……マトーヤ様にも連絡をとったけれど、原因はわからなかった。ただ……覚えておくように言われたわ。魂と生命にまつわる事象は、いまだ人の手には余るもの……予期せぬ事態なんて、いくらでも起きるんだって。」
クルル:「 ……ね、こんなときこそ笑顔でいきましょ。焦ったり、落ち込んだりしたら、余計に解決しなくなっちゃう。大丈夫よ、今も少しサンクレッドさんの容体が揺れてたけど、このクルルさんが、ちゃーんと安定させたもの!」
クルル:「ほかのみんなも、生命力が落ち込みはしたものの、その状態で安定してる。しばらくこの場を離れても問題ないわ。だから外で、あなたの話を聞かせてくれる?」
タタル:「みなさんが少しでも楽に眠っていられるようにと思って、「暁」のみんなで手分けして、寝巻きを着せたのでっす。いつか元気に目覚めたときのために、冒険用の服も、ちゃんと整えてありまっす。だから……無事に帰ってきてほしいでっす……。」
クルル:「 ……よしっ。それじゃあ、あらためて話を聞かせてもらってもいいかしら?もしかして、向こうで何か進展があったの?」
クルル:「そう……。ソウル・サイフォンの開発が難所を迎えてる一方で、あっちのみんなも、不調を感じ始めているのね。サンクレッドさんたちの症状は、肉体と魂の結びつきが薄れてきたことによるもので、まず間違いないわ。」
クルル:「今のところは、こちらから結びつきを補強できてるけれど、それもいつまでもつことか……。逆に言えば、懸念してるのはそのタイムリミットのことだけ。ほかの条件は整ってると、水晶公に伝えてちょうだい。」
クルル:「あとは……そうね……ソウル・サイフォンの完成に向けて、助言のひとつでもできればいいんだけど……。今は、アラグの記憶継承術を転用するところで詰まってるのよね?だったら、その道の専門家に相談してみるべきかもしれない。」
クルル:「幸い心当たりがあるから、すぐに訪ねてみるわ。さほど遠くにいる人でもないから、少しだけ待っていて。」